食品流通の用語で「丁合い」というのがあるが意味が分からないので知りたい。いくら探してもインターネットでも出てこないので知っている人がいたら教えてほしい。
こういった疑問に答えます。
もくじ
1. 「丁合」はおそらく当てた漢字が間違い。「帳合」について解説します。
2. 「帳合」以外にもインターネットで質問されていた「コールドチェーン」や「ドライ商品」についても解説します。
この記事を書いている私は、当時売り上げ規模一兆円を超える食品流通の商社に13年間勤めていました。冷凍食品営業職と常温加工食品物流管理(バイヤー兼)で在庫金額2億円の倉庫を管理しており、食品流通に関しては一通りの業務を経験してきました。
経験を活かし、興味がある皆さんに食品流通について解説します。
1. 「丁合」はおそらく当てた漢字が間違い。「帳合」について解説します。
結論は、「小売り業に品物を卸す権利」と考えるとわかりやすいと思います。
・丁合ではなく「帳合」が正解であろうと思われます。
・もう少し詳しく書きますと、小売業(買った側)と卸売(売った側)の買掛、売掛台帳(帳面)を照会し(合わせ)て、支払い金額に双方の台帳の辻褄があっているか確認することです。それが転じて、小売りからみて、卸ごとに仕入れるメーカーを分けていました。
・卸A社の台帳にはメーカーX社とY社、卸B社の台帳にはメーカーM社とN社と帳面を分けていたことから、転じて卸ごとに小売店への販売権利を帳合というようになりました。
・小売店が卸売に買掛金(商品を買った代金)を記録していきます。商売は一か月分の代金を掛けで買い、毎月の締め日に計算し、合計金額を翌月の決済日にまとめて支払います。小売店は、どのメーカーの商品をどの卸(問屋)から仕入れるか、台帳を分けていました。
・その台帳が分かれている様がまるで卸からして「このメーカーはうちが販売する」=「台帳に記載されるメーカーの販売権利を獲得する」となったようで、「帳合」は卸にとってとても大切な商売の決め手になっています。
・卸売は簡単に言うと、商品を作っていないので、よく「商品を右から左に流して利益を得るだけ」といわれた時期がありました。一時は東大の名誉教授となった人から「問屋無用論」を叫ばれることもありました。
・ただ、現代は、小売業も食品卸も年間の売り上げが何兆円にもなっている大きな企業があるので、ただ単に「商品を右から左に流して利益を得るだけ」などとはならないです。
・基本的にそれぞれの代金決済の金額が大きい為、総合商社傘下の卸でないと決済金を建て替えできなかったり、食品卸(問屋)は商う商品の物流量がとても大きい為、大量の物流量を大きな卸でしか対処できなかったりと、単純に決定できるものでもないのです。
・スーパーマーケットなどは、この帳合を複数に分けています。目的は価格だったりします。卸同士を競わせて価格を下げようとしていた時代が続きました。しかし今では卸の最先端の物流機能も加味されますので、一括物流(帳合の一元化)となることがあるようになりました。
・価格だけで卸を選択していた時代はとうに過ぎ、例えば鮮度、商品の傷み、小分け精度(オーダー通りにちゃんと配送できているか)などは見逃せないどころか、小売業にとって卸をパートナーとして考える大切な要素となっています。
・価格の安さというだけで決めてはいけない時代に入っています。にもまして、小売り業からすれば、大きな物量を一度に短時間で処理できる卸でないとオーダーすらも受けてもらえないということが発生してしまいます。
・当然、卸も在庫を抱えなくてはなりませんね。在庫とは「現金を確実に売れるわけでもない商品をメーカーから買ってしまうこと」です。だから、そのリスクを減らせるような信頼するパートナでないと、小売りも卸も倒産してしまうリスクを抱えていってしまいます。
・こうして、大きくなったマーケットを大きな企業同士で補いあっているのです。
2. 「帳合」以外にもインターネットで質問されていた「コールドチェーン」や「ドライ商品」についても解説します。
結論
「コールドチェーン」
メーカーから卸経由、小売店・消費者行きの旅を、冷風(マイナス冷風、4~10度の冷風)が出る装置で温度を適切に守りながら配送できるようにした設備全般です。
「ドライ商品」
すべて食品はいつか「腐る」という特質があり、その「腐る」ことをなるべく排除するために保管する温度を管理する手法は「コールドチェーン」でも触れましたが、それとは違い極力水分を食品から奪うことで、腐る要素を排除し「常温」でもある程度の日数は冷凍することもなく「保管」することができる商品のことです。
・コールドチェーンのボリュームが高くなる傾向にあります。生鮮食料品をなるべく長く「保管する」方法が今のところ唯一といっていい「冷凍」であり、普段よりも長く保存できる方法として、冷蔵庫などの低い温度で保存される、「冷蔵」だからです。
・コールドチェーンは冷風が出る機械(エアコン)を車両搭載し、断熱材を使った壁材で囲った荷室を使うので、ドライ商品などを運ぶ普通トラックより設備金額がかかります。
・当然配送賃は高くなります。ですが、食材を保管できる期間が長くなり、おいしい食材を品質を保ったまま流通できるのはとてもメリットが感じられます。
・ちなみに、低温保存はなぜ品質が保たれるのか?ですが、それは食品の中にいる細菌の活動と関係があります。どんな食品でも必ず中に細菌がいます。時間・日にちが経つほど、この細菌の活動が活発になり増殖します。その活動を不活性にするために、低温にすると細菌の動きが抑制されます。冷凍温度マイナス18度になると細菌の動きが完全に止まります。冷凍保存をすると、全く空気が動かない状態であれば3年くらいは食品の品質は保てます。ただ開け閉めの多い冷凍庫での保存がそれでも半年くらいの賞味期限になっているのはそのためです。
・一方、ドライ食品とは、食品が腐敗する要素の水分がある環境を限りなく少なくした食品のことで、温度管理するのではなく、食品の腐る要素の水分を脱した食品ということができます。
・今では容器や保存バックなどの外装の生産技術の発達により、水分がある食品でも長期の保存が可能なモノが出てきており、そういった食品も「ドライ商品」と位置付けられています。レトルトパウチのカレーなどがそれにあたります。
・ただ、どうしても外装の技術だけでは腐る要素から脱しきれない製品は、保存料などの食品添加物が含まれる場合があります。厚生労働省の基準は健康に害がないとされていますが、食品添加物は食べ続けると体に蓄積されるといった傾向があるようです。目に見えて影響はないものの、長年の蓄積が病気を発生させているのかもしれませんね。
・このコールドチェーン、ドライ商品が現代の「加工食品」を支えるキーワードになっていることは間違いないです。生鮮食品しかなかった時代は、塩漬けにしたり、お酢などでしめて、細菌を殺したりして保存期間を長くしました。しかし食味(美味しさ)が犠牲になるものはどんどん消えていってしまったのかもしれません。今は冷凍技術の発達で、生鮮品を冷凍することで、塩や酢などの保存料を使うことなく食味を左右されることがなくなりました。
・酢を使った食材で有名なのがお寿司ですね。もともと江戸時代に出来たファストフードで、屋台の引き売りが最初だったため、シャリやネタを酢でしめているのはそのためと言えます。酢が効いてない寿司は寿司でないといえそうですが、もともと酢でしめなくてもいい、コールドチェーンが発達していたなら、いまのように寿司は全く違った味に変化していたかもしれません。